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以下はよく利用されるシナリオに関して、平易に解説したものである。
より詳細は GoogleTest User’s Guide を参照のこと。
Google Mock では、引数が文字列 (char* など) の場合、文字列比較用のマッチャを利用できる。たとえば以下のようなマッチャがよく使われる。
StrEq("期待する文字列"): 完全一致StrCaseEq("期待する文字列"): 大文字・小文字を区別しないで一致// Mock対象のインターフェース (例)
class MyInterface {
public:
virtual ~MyInterface() {}
virtual int DoSomething(const char* str) = 0;
};
// Mockクラス
class MockMyInterface : public MyInterface {
public:
MOCK_METHOD(int, DoSomething, (const char* str), (override));
};
TEST(MyTest, CharPointerMatch) {
MockMyInterface mock;
// "Hello" という文字列が引数として渡される呼び出しを期待
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("Hello")))
.Times(1);
// 実際のコード側: 呼び出し
mock.DoSomething("Hello");
}この例では、DoSomething("Hello") が1回呼ばれることをチェックしている。もし大文字・小文字を区別しないでチェックしたい場合は StrCaseEq("hello") などを利用できる。
また、引数が正規表現にマッチするかどうかをチェックしたいときは、Google Mock の MatchesRegex マッチャを使用できる。
// "test" を含む文字列にマッチさせる例
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(MatchesRegex(".*test.*")))
.Times(1)
.WillOnce(Return(1));この例は、「どこかに test という文字列が含まれていればOK」というマッチになる。たとえば "mytestdata" や "this is a test string" などがヒットする。
Times(0) は、「その関数は呼ばれてはいけない」ことを示す。
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(_))
.Times(0);ここで (_) は「どんな引数でも」というワイルドカードである。Times(0) と宣言しているので、テスト中に mock.DoSomething(...) が一度でも呼ばれるとテストが失敗する。呼ばれてほしくないパスを明示することで、誤って呼んでいないかを検証できる。
呼び出し回数に制限を設ける場合、以下のように書く。
Times(2): ちょうど2回呼ばれることを期待Times(AtLeast(n)): 最低 n 回以上呼ばれることを期待Times(AtMost(n)): 最大 n 回まで呼ばれることを期待Times(Between(a, b)): a回以上、b回以下の呼び出しを期待Times(AnyNumber()): 何回でもよい例:
// ちょうど 2 回呼び出される
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("CountUp")))
.Times(2);
// 2回以上ならOK
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("CountUp")))
.Times(AtLeast(2));WillOnce は「その指定した呼び出し回数分だけ、ある動作を行う」ために使う。複数回 WillOnce をつないで書くことで、回数に応じて返却値 (あるいは動作) を変化させられる。その後、さらに呼び出しが続くときは WillRepeatedly が使われる。
// 例: 1回目は 10 を返す、2回目は 20 を返す、3回目以降は常に -1 を返す
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(_))
.Times(AnyNumber()) // 呼び出し回数自体は制限しない
.WillOnce(Return(10)) // 1回目
.WillOnce(Return(20)) // 2回目
.WillRepeatedly(Return(-1)); // 3回目以降以下のような呼び出しを想定する。
// 実際のコード側:
std::cout << "1回目: " << mock.DoSomething("test1") << std::endl; // => 10
std::cout << "2回目: " << mock.DoSomething("test2") << std::endl; // => 20
std::cout << "3回目: " << mock.DoSomething("test3") << std::endl; // => -1
std::cout << "4回目: " << mock.DoSomething("test4") << std::endl; // => -1WillOnce(...) / WillRepeatedly(...) には、Return() だけでなく Invoke() や InvokeWithoutArgs() など、さらに複雑な処理を実装することも可能である。たとえば「モック内でカウンタを増やしてログを出力する」などの挙動を仕込むこともできる。
すべてのテストで EXPECT_CALL を書くとコードが煩雑になる場合や、「あるメソッドの既定の返却値はテスト全体で共通にしておきたい」というケースがある。そのようなときに ON_CALL を使うと、モックに対するデフォルトの動作を定義できる。
ON_CALL(mock, メソッド(引数マッチャ))... は、具体的な 期待(Expect) ではなく、「もし呼ばれたらこう振る舞う」という動作設定を与える。呼び出しが本当に起こるかどうかは EXPECT_CALL で別に検証する。
class MockMyInterface : public MyInterface {
public:
MOCK_METHOD(int, DoSomething, (const char* str), (override));
};
TEST(MyTest, OnCallDefaultBehavior) {
MockMyInterface mock;
// デフォルト動作を設定: どんな文字列がきても -1 を返す
ON_CALL(mock, DoSomething(_))
.WillByDefault(Return(-1));
// 特定のケースだけ、挙動を上書きして期待も設定
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("special")))
.WillOnce(Return(999));
// テストコード内の呼び出し
// special 以外ならデフォルトの -1、"special" なら 999 を返す
EXPECT_EQ(mock.DoSomething("foo"), -1);
EXPECT_EQ(mock.DoSomething("special"), 999);
}このように ON_CALL でデフォルト (既定) の動作を定義しておき、特定の引数に対する期待と動作を EXPECT_CALL で上書きする、という使い分けを行うとよい。
Google Mock では、1つのモックメソッドに対して複数の EXPECT_CALL を書くとき、「最後に定義した期待が最初に評価される」 というルールがある。つまり、
EXPECT_CALL を定義していくEXPECT_CALL から順に「この呼び出しにマッチするか?」をチェックするEXPECT_CALL の動作が適用されるしたがって、特定の引数パターンを先に書き、その後に「どんな引数でもマッチする (_)」というパターンを書いてしまうと、後ろの _ が優先されてしまう 可能性がある。一般的に「もっとも限定的 (具体的) なマッチ」を後に書きたい場合は、その意図に沿って定義順を工夫する必要がある。
_ は先に (上のほうで) 定義しておく」例もし「ある条件に厳密にマッチさせたい EXPECT_CALL」と「デフォルトでマッチしてほしい _」を共存させる場合、Google Mock の“最後に定義したもの優先”の特性を踏まえると、以下のように書くことが多い。
// (1) まず「どんな引数でもマッチする」ルールを定義
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(_))
.Times(AnyNumber())
.WillRepeatedly(Return(-1));
// (2) その後で、特定の引数のルールを定義 (こちらが優先される)
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("Hello")))
.Times(1)
.WillOnce(Return(999));この順番にすることで、以下のような動きになる。
DoSomething("Hello") が呼ばれた → まず後で定義した (2) の EXPECT_CALL にマッチするかをチェック → マッチするので、999 が返る。DoSomething("Other") が呼ばれた → (2) はマッチしないので、次に (1) の _ がマッチ → -1 が返る。もしこれを逆に書いてしまうと、(2) のほうが先に定義され、(1) のほうが後に定義されるため、DoSomething("Hello") が呼ばれたとき、(1) の _ が優先して評価されてしまう (マッチしてしまう) ので、意図どおりに「Hello だけ特別な返却値」を返せなくなる可能性が高い。
Google Mock では、複数のメソッド呼び出しが特定の順序で行われることをテストできる。主に以下の方法がある。
InSequence ブロックを使用するInSequence オブジェクトをスコープ内に配置すると、そのスコープ内で記述した EXPECT_CALL が記述順に呼ばれることを期待する。
{
testing::InSequence seq;
EXPECT_CALL(mock, MethodA()).Times(1);
EXPECT_CALL(mock, MethodB()).Times(1);
}
// ここでは、MethodA() → MethodB() の順で呼び出されることをテスト
// 実際に MethodB() → MethodA() の順で呼ばれるとテスト失敗になるInSequence はシンプルで扱いやすい方法である。複数のメソッドに対して呼び出し順序をテストしたい場合に便利である。
Sequence オブジェクトを使うより複雑な順序制御を行う場合は、testing::Sequence オブジェクトを使う。Sequence を使うと、複数のシーケンスを定義し、一部のメソッドはシーケンス1の順序に従う、一部のメソッドはシーケンス2の順序に従う、といった分割もできる。
Sequence s1, s2;
// s1 に属する呼び出し: M1 → M2 の順で呼ばれることを期待
EXPECT_CALL(mock, M1())
.InSequence(s1);
EXPECT_CALL(mock, M2())
.InSequence(s1);
// s2 に属する呼び出し: M3 → M4 の順で呼ばれることを期待
EXPECT_CALL(mock, M3())
.InSequence(s2);
EXPECT_CALL(mock, M4())
.InSequence(s2);
// これら2つのシーケンス (s1, s2) はそれぞれ独立して順序をチェックする
// M1 → M2 の順と、M3 → M4 の順が守られていれば OKシーケンス間の順序制御はとくに指定しない限り独立なので、たとえば s1 に属する呼び出しの途中に s2 の呼び出しが行われても構わない。
テストを作成しているときに、「モッククラスで定義しているメソッドが未使用の場合や、意図しない呼び出しが行われる場合」の警告が煩わしく感じることがある。Google Mock では以下のような仕組みが用意されている。
StrictMock<T>: 未設定の呼び出しはすべてテスト失敗とするNiceMock<T>: 未設定の呼び出しは許容し、テストを失敗させない(警告も出さない)NaggyMock<T>: 未設定の呼び出しに対し警告を出すが、テストは失敗させないテストを記載していく中で、「想定外の呼び出しがあったときにテストを失敗させる」という Strict な設定はテスト記述の冗長性を高めたりハードルを上げたりすることがある。そこで、定義されていない呼び出しを許容する NiceMock を使うと、明示的に EXPECT_CALL しなかったメソッドが呼ばれてもテスト失敗にならない ため、コストを下げつつテストが書けるというメリットがある。
ただし NiceMock は「想定外の呼び出し」があっても見逃してしまうため、大規模なテストでバグが混入しやすくなる可能性がある。最初は NiceMock を使いつつ、テストがこなれてきたら NaggyMock や StrictMock に切り替えていく、という運用が良い。
NiceMock の使用例using ::testing::NiceMock;
class MockMyInterface : public MyInterface {
public:
MOCK_METHOD(int, DoSomething, (const char* str), (override));
};
TEST(MyTest, NiceMockExample) {
// NiceMock 化
NiceMock<MockMyInterface> mock;
// ここでは特定の引数 "Hello" に対する期待を設定
EXPECT_CALL(mock, DoSomething(StrEq("Hello")))
.WillOnce(Return(123));
// "Hello" 以外の文字列を渡してもテストが失敗したり警告が出たりしない
mock.DoSomething("Hello"); // => 123
mock.DoSomething("Other"); // => 期待を設定していないがエラーにならない
}このように、NiceMock を使うと「厳密にどのメソッドが呼ばれたかはあまり気にしない」状況で、とりあえずテストを通す・試験的にモックを利用してみる、といったケースで重宝する。
StrEq や MatchesRegex などを使うことで、文字列や正規表現に対する一致を指定できる。Times(0) で「呼ばれてはいけない」というテスト、Times(2) で「ちょうど2回」、AtLeast(2) で「2回以上」など、細かい条件を指定できる。EXPECT_CALL によって上書き (あるいは厳密な期待設定) をする使い方が一般的である。EXPECT_CALL を後に書き、どんな引数でもよい _ のようなルールは先に書くのがセオリーである。InSequence や Sequence を活用することで、「メソッドA→メソッドBの順で呼び出されること」を厳密にチェックできる。NaggyMock や StrictMock も検討するとよい。これらを踏まえると、Google Mock で柔軟かつ意図通りのテストを組むことが可能になる。